[働き方とROIC] ROICとWACC、そして改訂されたコーポレートガバナンスコードの「資本コスト」について

TRANSIT

今日は「ROICとWACC」について、本質的にどう言う意味なのか、どのように使われるべきなのかについて、わかりやすくお話しします。

このように教科書的な理解ではなく本質的な理解をすることによって、

自分の会社ではまたは自分の部署では具体的に何をすれば良いかが具体的に行動できるよう、お伝えしていこうと思います。

コーポレートガナバンスコード

最初に

これらの話ですが、まず2015年3月に金融庁と証券取引所によって制定されたコーポレートガバナンスコードについて理解しなければなりません。これは簡単に言うと「上場企業としてこのようなことに取り組みなさいよ」と言う規約のようなものです。

そして、直近では2018年6月にこれが改訂されています。

 

ガバナンス・コードは「基本原則5個」とその原則に関する説明(「原則」「補充原則」)で成り立っています。大きくは五つで、それらの施行細則があるという印象で捉えてよいでしょう。

基本原則

繰り返しですが、基本原則には原則が五つあります。ガバナンスを効かせるために最も基本的なことを定めているものですが、

例えばこんな話

「XX会社が社外取締役を置きました」

という話を最近よく耳にすることはありませんか?

 

これ、実はこのガバナンスコードに対応しましたということなのです。そしてガバナンスコード5番目に出てくるのが「株主との対話」と言う項目。株主としっかり対話して理解し合えるようにしなさいよ、ということなのです。

 

これについて2018年6月の改訂で追加された文言があります。それが「資本コスト」と言う文言でした。

WACCと資本コスト

資本コストとは一般的にコーポレートファイナンスの世界においては”WACC”(ワック: Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれているものです。

 

そして「原則5」に追記された文言が重要なのですが、何と表現しているかというと(下線部が追記された文言)

 

▪️改訂前からの変更点:東京証券取引所のページに飛びます:https://www.jpx.co.jp/rules-participants/rules/revise/nlsgeu0000034ytw-att/sinkyu.pdf

(p6 「原則5−2」に新旧対照)

【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】

経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握 した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率 等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設 備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実 行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきであ る。(赤文字が追記文言)

ここに

・自社の資本コストを的確に把握した上で

とあります。これはどういう意味なのでしょうか。

 

これは「資本コストであるWACCを ”的確に把握”

し、そのレートを超えられるよう、ROICを計測し効果測定をする経営をしましょう!」という意味です。これについては下記にて詳しく説明します。

 

他方、2015年に制定されたガバナンスコード、これらがどれくらい実施・実践されているかについて、取引所が出しているアンケート結果があります。

 

▪️東京証券取引所のページに飛びます:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000003u637.pdf

(調査 2018.12)

確認して見ればわかりますが、5番目「株主との対話」にある資本コストに関する「原則5−2」が一番低い(原則5-2は79.8% 他は99.9%)という結果が出ています。(アンケートは1部上場ならびに2部上場企業のみ実施)

WACCと資本コストとROICハードルレート

ここではみなさんの理解のために資本コスト(WACC: ワック: Weighted Average Cost of Capital)とは何かについてまずはお話ししたいと思います。資本コストとは文字の通り資本にかかるコストのことです。

 

ここでいう「コスト」とは誰にとってのコストなのでしょうか。ここでいうコストとは、実は会社つまり投資される側にとってのコストのことです。投資する側にとってみたらこれは「ただ「P/Lが黒字」っていうだけでなくて「これくらい」稼いでよね、という期待」に転換されます。立場が変わればそれが反対になるということですね。(これを市場からの期待レートという表現をすることもあります。)

 

次に「ただ利益をあげればいいだけではない」という点に着目します。

つまり投資家から一定以上(例えばWACC=年率6.5%)の水準の利益率を上げなさいという期待をされている。これが資本コストということになります。

 

ここで再びガバナンス・コードに戻ります。

自社の資本コストを的確に把握した上で、(略)資本効率に関する目標を提示 とあります。

 

そうです。ただWACCを計算するだけではダメなんですね。計算し把握した資本コストを前提に、

・自社の事業の効率性を提示する必要がある

と言っています。

 

ここでいう「自社の事業の効率性」これこそが、ROIC(ロイック:Return on Invested Caital)といわれるものです。 つまりガバナンスコードは言外に「ROICを事業別に把握し」「予算配分の効率性に対して目標を提示しなさい」と言外に言っているのでした。

 

このように、「WACC」と「 ROIC」は対比されて語られるケースが多いです。そして、資本コストのことを「ROICのハードルレート」として捉え、ROICを算出する、というやり方が多いと考えられます。

 

(例)

例えば、ある会社の事業部がA ーDの4部門あるとしましょう。

 

・部門Aは事業予算が28億でROIC=5.6%

・部門Bは事業予算が5億でROIC=▼4.7%

・部門Cは事業予算が45億でROIC=5.2%

・部門Cは事業予算が23億でROIC=6.8%

 

これを計算すると結果的に合計ROIC=7.2%となります。

(ハードルレートである6.5%をクリアしています。)

 

これが「資本コストを的確に把握」の真意です。

 

以上、本日はここまでお話しとさせていただきます。

次の記事ではROICの計算方法についてひもといていきたいと思います。