[働き方改革] 現場からの「価値ある情報」のフィードバックを活用しないと組織のその後はどうなるのか、について旧日本軍・ノモンハン事件から学べること。

TRANSIT
組織が失敗するとき—。

きょうは組織の失敗についてその原因から考えてみることにします。


まず組織にとっての失敗とは何でしょうか。組織に属するある個人が何かに挑戦し、そして失敗した。このことは組織の失敗と言わない。これが一般的な感覚でしょう。

組織の失敗とはその原因を探れば不作為の罪、つまり組織内の誰かが何かをやらなかった結果起きた失敗のことを指して言われることが多いと考えられます。トランジットワークスでは不作為によって生じた組織の失敗事例を特に「組織の失敗」として取り扱っていきます。


そして本稿ではこの「不作為」についてノモンハン事件からの教訓を引き合いに、組織として「やらなかった何か」とはいったい何だったのか、何が必要だったのかについて検証します。

ノモンハン事件とその後の対処

昭和十四年に起きたノモンハン事件はその後の日本、大本営参謀本部の意思決定に重要な示唆を与えるべき事件でした。しかし現実にはそうはなりませんでした。


昭和十六年(1941)の真珠湾攻撃に端を発する太平洋戦争が起きる前に旧満州とソ連との間で起きた「ノモンハン事件」。昭和十四年(1939年)5月から同年9月にかけて、満州国とモンゴルの間の国境線をめぐってソ連と日本軍の間で発生した紛争です。


実はそれ以前、つまり昭和十四年以前も日本は既に戦争にのめり込んでいました。日中戦争です。しかし当時の相手国である中国は連合国と比較して火器装備や資源の貧弱な相手だったことは確かなようです。つまり日本軍部にはノモンハン以前、昭和十四年の段階までは連合国との実戦に関する情報は無かったのです。


ただ、当時は第一世界大戦の反省から協定による情報開示などもあり、連合国軍側の戦力、特に現場の重火器の物量が自国日本のそれとは大きくかけ離れていることを日本の軍中枢部はある程度認知していました。しかし当時の軍部にはあくまでも実戦を伴わない統計情報として認知されていただけであり、実戦経験からの情報フィードバックは無かったのです。この様に実感を伴わない段階でもあったため、軍司令部は前線に先方まで事細かに指示しにくかった事実については、非難されるべきことではないでしょう。


しかしこのノモンハン事件こそ、連合国軍側との実戦情報という大きな情報をもたらしてくれたはずだったのでした。事件の後に日本の軍部が「やるべきだった何か」つまり「連合国側と実戦で戦う際の生の情報」を大本営参謀本部は検討するべきだったのです。この実戦での情報を貴重な情報として、中間マネジメント層である「関東軍」を通じ、マネジメント層である大本営軍総司令部に適切な情報として伝えるべきだったのです。


価値ある情報

これらを一般的に表現するのであれば、「現場からの価値ある情報を、貴重な資料へと転換する作業」つまり価値ある情報の「取り扱い」について組織の誰かがしっかりと行うべきだったのです。組織の誰かとは「中間マネジメント層」を指します。組織崩壊の序章は「中間マネジメント層のある行動」に原因があることが徐々にわかってきます。


「情報戦」における中間マネジメント層の役割

現場からの価値ある情報とは現場にとっての価値ではなく「組織にとって」価値ある情報です。まずここで中間マネジメント層とはどんな存在であるべきなのか考えてみる必要があります。


中間マネジメント層を考える際に、彼らが起こしがちな2つの行動について考えてみましょう。一つめ:「下からの情報を上層部にそのまま流す行動」。これはロボットでもできますね。二つめ:「良い方向に情報を「お化粧」して上に上げる行動」です。中間マネジメント層とはどんな存在である「べき」なのかを考えた時、そのどちらでもありません。


彼らがやるべきは、「情報の意味や価値を適切に咀嚼・編集して価値ある失敗情報として組織のその後のために上層部に挙げる行動」にあったのでした。「価値ある情報」とは現場でも上層部でもなく「中間マネジメント層」が中継ぎをしないと全く効果を発揮しません。情報を下から上に横流しするだけではダメなのです。


ノモンハン事件における中間マネジメント層はどうだったか

この年は太平洋戦争(真珠湾攻撃はこのあとの1941年)が始まる2年前です。連合国軍側の「圧倒的な資源量や火力差」を知る機会があったのにも関わらず中間マネジメント層に当たる関東軍は大本営と主張の競り合いを繰り広げるなどをしています。本筋とは関係ないので割愛しますが興味のある方は別途調べてください。


この結果、「圧倒的な兵器の実力差」という有用な情報があったにも関わらず、大本営はこれを十分に認識できませんでした。


ノモンハン事件における本部(大本営戦略本部)はどうだったか

ここまでは中間マネジメント層がどうであったのかについてお話ししましたがもちろん本部にも欠陥があります。


大本営の汚点はこの時行われた主張の競り合いに対して関東軍のメンバーの更迭を行って終わりとし、敗因である「原因情報を取得する努力(原因究明)」をしなかったことにあります。組織が原因分析をしないことはありえないと思うかもしれませんが、この当時はその様な仕組みがありませんでした。そして敗因分析をしなかったことが、その後日本が傷口を広げていった原因の一つとなったのです。


アナリシス

「現場が発した情報」を「価値ある情報」として中間マネジメント層が捉え、それを上層部である大本営参謀本部に報告すれば大本営参謀は何が価値ある情報であるのかを把握できたはずでした。しかし事実として中間マネジメント層に相当する関東軍はこの情報を伝えていません。


しかし一般的にはこれを「関東軍が握りつぶしてしまった」と表現するかもしれませんが、組織論としては問題があります。


なぜなら関東軍はこれらの情報を意図的にあげなかったのではなかったからです。現実は「特にその様なことをするべきだとは何も考えなかった」「それよりも成果・戦果をあげる方が重要だった」「大本営との意識のズレに怒りを感じていた」これが現実と伝えられています。


こうしてノモンハン事件の敗北の際に得られたであろう「価値ある情報」は、把握はされていても有用視や認識をされませんでした。その後日本は敗北への道を進んでいくことになります。


価値ある体験

歴史にもしがあるとしたら、大本営参謀が先進国の戦力についての現場の情報の中から敗因を分析し「価値ある情報」を取り出すことができていれば敗戦は免れなかったにせよ、早期に戦争終結ができていたかもしれません。


さて皆さんは仕事をしていて

「こんなことやっていると組織が危ない」「これを続けるとこの会社はやばい」 と感じた経験はないでしょうか。


これは「価値ある体験」である可能性は非常に高いと言えます。 そしてその時皆さんのこの「現場の声」をあなたの上司はきちんと適切に組み上げそしてそれを上層部に報告したでしょうか。ほとんどの場合、そのようなことを言えるような雰囲気ではありませんよね。「そんなくだらないことをいちいち言うな」と言っている上司の顔が浮かぶかもしれません。


当然ながら現場の全情報を経営層にフィードバックすると膨大になります。ですがもし「何がくだらなくて・何がくだらなくないか」をスクリーニングする仕組み、「価値ある情報」を上層部にフィードバックする仕組みがあったらどうでしょうか。マネジメント層に有益な情報を与え、それを元に「決定」を促すことができるかもしれません。


「価値ある情報」は現場が声を上げなければ得られません。その意味でトヨタの「アンドン」は十分研究に値する仕組みだと言えます。まずは、チームで業務データを取ること、そして、「なんか変だな」と感じたらそれを共有する仕組みを作るところから始めてみませんか。

参考サイト(ノモンハン事件について)

https://bushoojapan.com/scandal/2019/08/13/27908

 

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